先日、一通の往復はがきが届いた。
多分、今の場所に引っ越してからDMとか請求書以外で初めて僕宛に来た個人的なものだった。
中学校の同窓会の案内はがき。
お袋から
「中学校の同級生からアンタに電話があったわよ」
と聞いたのは、去年の11月頃。
「同窓会やるらしいわよ。アンタもそんな歳になったのねぇ。」
そう聞いていた割には、案内状が届く気配もなかったので、オレオレ詐欺の準備かと思ったが
、実家にそんな電話がかかってきたところで、
「人身事故?そんな息子はウチには要らないよ」
となるのがオチなので安心しているが、実際そうだろうからあんまり気分がいいもんではない。
それにしてもはがきが遅いものだから、僕だけ呼ばれないかと思った事に妙にホッとしている僕。
中学かぁ・・・
ホッとした割には行かないでおこうかと思っていたりする。
あんまり鮮明に思い出せないし。
そりゃそうだ。20年も前のことだから。
いい思い出らしいものもない。
唯一思い出すことといえば・・・
ノリコちゃん…
僕の中学時代といえばノリコちゃんといっても過言ではない。
僕のクラスの…
隣のクラスだった…
小学校の頃から好きだった相手で、バスケット部のキャプテン。
2回告白して、2回撃沈された相手・・・
「艦長!この船はもう駄目です!」
「よし。全員を退避させろ。」
「はい!・・・・艦長は?」
「俺には船の責任がある。艦長というものはそういうものだ…。」
「…か、艦長(泣」
「早く行け。コレは命令だ。皆を頼んだぞ…。」
「…ハイ(泣」
「いずれまた会おう…」
…というわけで僕の多分初恋は人生の大海原へと消えていった。
そんな、彼女と再び出会ったのは19の頃。
とあるバイトでぬいぐるみの中に入っている時。
「一緒に写真いいですか?」
といわれウサギの口の狭い視界の中から声のほうを見ると、化粧をして少し大人びた彼女がいた。
ウサギの中で本当に良かった、と思ったものだった。
アメフトの選手みたいなごっつい男と一緒にいた。
ちくしょ~こいつがノリコちゃんの彼氏か…
「青コーナー挑戦者、100パウンドちょっとぉ~、かぶりものウサぁ~ギ~。赤コーナーチャンピオン、180パウンドぉ~、イケメンセンターバックぅ~」
カーン
バスバスっドスドスっ
カンカンカンカン
「実況:あっけない幕切れでしたね。挑戦者一度もパンチを繰り出すことなくKOでした…」
こりゃ無理だな…かなわね~や。
その時僕は世知辛い世の中の現実をまざまざと見せられた気がしたものだった。
その一年後の夏、大学の学食にて。
うどんを食べていた僕にジャンピングキックを放ち、僕の鼻から麺を出させた男。
ホストクラブでバイトをするこれまたイケメンの講義サボりの同志。
数週間、時には数ヶ月講義には来ず、大学は8年行くものだとハナから決め付けていた彼。
その日も久しぶりの再会で挨拶がキック。
でもなんとなく憎めないやつだった。
そいつは席に座るとこう言った。
「先月は7回も合コン行ったんだよ」
ふ~ん。どうだった?
「8人くらいご馳走になったかな」
計算合わね~じゃん。
「ま、色々あるのよ」
お前ホントすげ~な。
「まぁまぁってとこだろね」
さすがやね。
「んでもさ、最近面倒なことになってさ」
どしたん?
「前に口説いた女をこの前ようやく落としてホテル行ったんだけどね」
フムフム。
「そっから本気になっちゃったみたいで、最近店とかマンションにまで現れるようになってさ…」
お、キミにもとうとう年貢の納め時がやってきたようだね。
「バカ言え。俺はまだまだ遊ぶよ。だから困ってるのさ」
そりゃ自業自得ってやつだよ。
「ココで張り込みされたらどうしようってビクビクしながら今日も来たんだぜ」
こんな田舎の大学に来るなんてそんな面倒な事しないだろ。
「でも彼女の実家ここをちょい下ったトコにあるらしいんだよ」
(…それってウチの中学校区じゃん)
ふ~ん。ところでさ…
可愛いの?
「まぁまぁかな。あのさ…」
ん?
「こんな女がココに来たら最近見てないよって言ってくれ」
そして取り出された一枚のポラロイド写真。
胸のふくらみの分かる、ギリギリ先端が写っていないが、明らかに何も着てないところを撮りましたという写真…
( ゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚ Д゚) !?
ノリコちゃんだった。
「いやぁもうさ怖くて怖くて」
最初はハメられてるのかと思ったがそうでもなかった。
写真に彼と並んでみだらな格好で、頬を紅潮させて、それでも幸せそうに写っているのは間違いなく初恋のノリコちゃんだった。
当時僕には彼女がいた。
だからショックは少なかったのかもしれない。
それでも彼には少なからず憤りを覚え、そんなノリコちゃん心のどこかで想っていた自分に情けなさを感じた。
軽くめまいがした。
「俺の青春を返せ!」と、今にして思えばそれこそ青春真っ只中の僕は考えたものだった。
そして、その青春の思い出を軽く葬りさった彼とはその後一度、どこかのキャバ嬢風の女性のメルセデスに乗って帰るところで、すれ違いざまに挨拶しただけだった。
その冬。
成人式。
高校の同級生達と周辺警備のパトカーのボンネットに乗っかって記念撮影をしていたところをお巡りさんに見つかって、
「これから大人になるというときにだな、…うんちゃらかんちゃら」
という有難い祝辞を頂いてる時。
お巡りさんの後方から視線を感じたので目をくれると、そこには友達数人と綺麗な振袖身を包んで立っている、僕が知るより少しほっそりしたノリコちゃんがいた。
こちらを見てクスッと笑い、僕に向かって軽く会釈をする彼女に僕も笑顔で少し手を上げた。
「キミは私の話を聞いているのかね?」
「すいません。聞いてませんでした!」
有難い祝辞の時間が延びて、一緒にお言葉を頂戴した友人達全員からヘッドロックされても痛くなかったのは、きっとノリコちゃんの笑顔見て安心したからかもしれない。
例のホストの友人とは2度と会うこともなく、噂によれば堅気ではない方の反感を買い横浜港に沈んでるとか、モナコでプロのギャンブラーになり儲けた金でルーマニアに城を買ったとか、いろいろな説が流れた。
どれが本当でも驚きはしない。
海底にいて人魚を口説いていても、ドラキュラになって必要以上に美女ばかり狙っていても、僕は信じる。
それよりもノリコちゃん。
彼女は幸せになれたのだろうか。
…などという青春スペクタクルをたった一枚の葉書によって思い出した僕。
そういえばノリコちゃんの親友がウチのクラスにいたっけか…
あの子だったら知ってるかも。
今更知ってどうなるというわけでもないが。
同窓会行ってみようかな…
ペンをとる僕。
(会場の都合上、出欠席は1月10日までに葉書にてお知らせ下さい)
え~と今日は…
…
…
駄目ジャン…
「青春は短い。宝石の如くにしてそれを惜しめ。」
と、倉田百三という方は仰ったそうです。
は~い。
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